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02太陽 

02 太陽の目次へ戻る

5. 太陽光の分光

(1) NDフィルターを利用した太陽の観察へ戻る

 

(2) フラウンホーファー線へ戻る

 

(3) 影の正体を写すCaKフィルターへ戻る

 

(4) Hα線のフィルターへ戻る

 

(5) Hα線の写真に写るものへ戻る

 

 

(6)ドップラー効果

 星が遠ざかって行く速度を測る時に使う原理がドップラー効果です。

image026

 たいていの星は、遠ざかって行きますので、赤方偏移red wing shiftを計測します。

どうやって計測するのかというと、色々な元素の輝線スペクトルや影のスペクトルを撮影して、そのずれであるドップラーシフトDoppler shiftを測り、それを利用して速度を計算します。

 

 太陽でそれをやってみましょう。

 

 

@太陽の自転によるフラウンホーファー線のドップラーシフト

 フラウンホーファー線は太陽のスペクトルに水素が落とす影です。水素が影を落とす

波長が一定であるとすれば、太陽は自転していますので、地球から遠ざかっている太陽

の東側(CMDではなく経度Longitudeの東、太陽に向かって右側)ではフラウンホーファー線

は、赤方偏移red wing shift しているはずです。一方、地球に近づいているところでは、

フラウンホーファー線として影を落としている水素は地球に近づいています。

近づいてくる場合は、青方偏移するはずです。

   

 それが写るか、試してみましょう。

先ずは、復習をかねて、Hα望遠鏡で写るフラウンホーファーのC線の話を確認しましょう。

 

image039

2017/02/21  09:05  の太陽を

Hαフィルターで撮影したものです。

image040

カラー画像のBプレーンに写った影です。

 フラウンホーファー線のC線は、この影

がスペクトルには暗い線になって影を落とし

ています。

image041

カラー画像のGプレーンに写った影です。

フラウンホーファー線のC線は、この影が

スペクトルに影を落としたものである点は

Bプレーンと同じです。

image042

その影の正体は、上述の方法で、

見えるようにすると、この写真になります。

 つまり、プロミネンスとスピキュールが

影を作り出しているものの正体です。

 

 

 

ここまでは、簡単なのですが、これからが難問です。

 

 

 ちなみに、理科年表の数値から、シフト幅を計算してみましょう。

理科年表より 

太陽の半径r  6.960×108 m

  地球に対する太陽の自転周期   26.90

∴太陽の赤道上の自転速度v

  2πr /26.9/24/60/60

  = 2×3.14159265×6.960×106 Km/ 26.90 / 24/ 60 /60 

  = 1.88 Km/sec

 

Hα線(フラウンホーファー線のC)の波長vは   656.3 nm

光速度cは        3×108 m/sec = 3×105 Km/sec

∴ シフト幅Δλは

  656.3 nm × v / c

   = 656.3 nm × 1.88 Km / 3×105 Km

   = 4.1128 ×10-3nm

   = 0.0041128 nm

東西両端の速度差は、この2倍になりますので、

  0.0082256 nm  = 0.082256 Å です。

 

  しかるに、ここで使用するフィルターLS35Tの通過帯域の半値幅は0.75Å以下です。

ざるどころではありません。どうやって写すのか・・・・・。

天文台やコロナ観測所のような特注のフィルターを発注する予算はありません。

考え抜いて、思いついたのが、次のテクニックです。

 

A傾斜型干渉フィルターの使い方

image026

 Hαフィルターの通過帯域の

模式図です。

image032

それに対して、太陽の自転による

フラウンホーファー線のシフト幅

は帯域幅の1/9程しかありま

せん。

image030

そこで、フィルターのチルトを浅く

して、フィルターの帯域を青方

シフトさせます

image016

 左の図のフィルターと光軸の

角度をゼロにすると、透過する光の波長は最小になります。

逆に角度を大きくすると、透過

する波長は長くなります。

 先ずは、角度を浅くして、

フィルターを青方偏移させます。

 

image032

そうすると、赤方偏移した、

フラウンホーファー線は暗く、

青方偏移したフラウンホーファー

線は明るくなります。影を写しているのですから、暗い方を取り出

せばよいわけです。

image033

 つまり、フィルターのチルトを浅くして、通過帯域を青方偏移させて、明るめの露出で

撮影すると、赤方偏移したフラウンホーファー線(フィラメント、プロミネンス、スピキュール)

が撮影できます。

 

 

 

B傾斜型干渉フィルターを利用した太陽の自転による赤方偏移 red wing shift の撮影

image046

2017/02/21

チルトを0°にし、フィルターを

青方偏移させたカラー画像

です。

image047

BプレーンとGプレーンに写った

影の写真を加算平均した画像

です。

右下の影が濃く出ています。

image048

これを現像したカラーの

プロミネンスやスピキュールの

写真です。

これが、地球から遠ざかっている

赤方偏移の部分の写真です。

 

 

 

 

 

 

C傾斜型干渉フィルターを利用した自転による青方偏移 blue wing shiftの撮影

 

 

image036

次に、フィルターの傾斜を大きくして、通過帯域幅を赤方偏移させます。

image040

赤方偏移したフラウンホーファー線を明るく飽和させて消してしまえば、暗い青方偏移した

フラウンホーファー線だけが写ります。

image043

 フィルターのチルトを最大にして、赤方偏移させた状態で撮影した写真です。

 わずかですが、右斜め下が明るく写っています。

image044

BプレーンとGプレーンに写った影

の写真を加算平均した画像です、

右斜め下の影が薄くなっています。

image045

 それを反転した画像です。

左上に影の部分が明るく見えて

います。青方偏移Blue wing shiftした

フラウンホーファー線なので青い

写真にしてあります。

 

 

 

 

D太陽のドップラー・ダイヤグラム

 

image049

上記の青方偏移の青い写真と、

赤方偏移の赤い写真を合成する

と、こんな写真ができます。

これを、ドップラー・ダイヤグラムと

言います。

 太陽の左上が地球に近づき、

右下が地球から遠ざかっている

ようです。

image032

 答え合わせをしておきましょう。

撮影時刻の太陽の北極は、

赤経の北から右に19.3°傾いて

いて、太陽の赤道は、上に7°

上がっています。

 ドップラー・ダイヤグラムの写真に

は、太陽の自転がちゃんと写ってい

ました。

(1) この、太陽の座標の図は、「ある日の太陽面, Yamane's Homeで、作成した画面です。

 理科年表などで計算していたのが、このソフトを使えるようにしていただいたお陰で、秒速で

図として得られるようになりました。無償で提供してくださっている、Yamaneさんに心より感謝

いたしています。

 ここに示されているEWCMDEWで、太陽の経度の東西は逆になります。

 

 

 

(2) この結果をもとに、太陽の自転方向とドップラー・シフトの方向が一致している

ことは確かめられました。

 

(3) 外周のプロミネンスも、上記の写真では、写ったり写らなかったりしています。

PSTなど、外周のプロミネンスを全周にわたり美しく写せるように、ブロードバンドに設計され、

さらに、高い位置まで上がって高速度で動く水素のプラズマの光をとらえるために、

フィルターのカッティングの傾斜がなだらかな太陽望遠鏡やHαフィルターですと、

このような、実験はできないかもしれません。

  太陽の、光球面を平板に写し、全周のプロミネンスを写す用具とは、根本的に

異なる発想で、作られた用具を調達して、さらに、上述のように改造を重ねて写しています。

 

EナローバンドでシャープエッジのHαフィルターの特性

image051

この写真は、薄雲があって、フラウンホーファー線がぼんやりとしか見えない時の写真です。

  この日はフィルターを傾けて、透過波長を変化させる機構のヒンジの部分が、視野の

左下方向にありました。その影響が出ています。

  傾斜型の干渉フィルターを通過する光の中で、フィルターに直角に近い側では、

短い波長の光が透過します。また、反対にフィルターに平行になる方向にずれている側

では、波長の長い光が透過します。

  左下側ではHα線よりも少し短い波長に、また、右上ではHα線よりも少し長い波長

に中心周波数があってしまいます。極めてわずかな差なので、良く晴れている日には

わからないのですが、薄雲に太陽光が弱められた場合には、両端では影である

フラウンホーファー線がぼやけて写らなくなります。

 

(4) 非常にテクニカルな話なので一般の方はこの注4は読み飛ばしてください

 薄雲や霧などで空が少し白い時に、この性質が気になる場合には、太陽の自転軸が

どんな角度になっているのかを上述のサイトなどで調べて、チルトのヒンジの位置を、

太陽の自転の赤道の左端に合わせてあげると、撮影画像が改善します。そのためには、

私がLS35Tをファインダー脚で固定して、必要に応じて鏡筒を回転させているのと

同じような工夫が必要になります。そうすれば、天気の良い日には、@の最後の

プロミネンスやスピキュールの赤い写真のように、赤方偏移や青方偏移のほとんど

わからない写真が撮れます。ただし、バンド幅が0.75Åくらいまででないと、うまく

いかないかもしれません。狭い帯域のフィルターの宿命ですので、ダブルスタックなど

して、狭くしていると、うまくいかないかもしれません。

 

 

F再実験

 Eの特性の結果、B〜Dで写ったものが、本当にドップラーシフトなのか、フィルターの

特性による明るさの差なのかわからないではないかという疑問が生じます。

 

 

検証方法

鏡筒をフィルターとともに回転してみて、

    赤と青の色分けが、鏡筒の回転とともに回転するならば、

      フィルターの特性。

    赤と青の色分けが、鏡筒の回転とともに回転しないならば、

      太陽の自転によるドップラーシフト。

ということになります。

    

image036

2017/02/24 09:36

鏡筒を180度回転して写しました。

色の違いは回転しませんでした。

image036

結果は前日と変わらず左上が地球に接近、右下が地球から遠ざかっていますので、ドップラーシフトが検出できているようです。

 

 

 

 

G狭帯域Hαフィルターを使ったフレアかプラージュかの判定

  今まで説明してきたLS35THα線のフィルターの仕様書には、通過帯域幅が0.75Åであると書かれています。もっと波長の通過帯域幅が狭いフィルターもあります。そうしたものを使うと、違ったこともできます。以下に使ったフィルターは、帯域幅がDay Star製の0.20.5Åのものです。

 

この判定が必要になった理由 

image017

2016/04/15 の太陽です。

NDフィルターで写した写真

には、大きくてきれいな

黒点が写っています。

image019

CaKフィルターで写すと、

黒点の周りには大きな

プラージュが広がって

います。

image021

 帯域幅が0.75Åの

Hαフィルターで写した

写真の、黒点のそばに、

白いところがあります。

 では、Hαフィルターに

プラージュが写ったので

しょうか。

 これだけでは、結論を

出すには早すぎます。

 

 

 

そこで、判定に使用するのがドプラー効果の観測です

image025

先ずは、Hα線の波長より0.4Å長い

波長を中心にして、撮影してみます。

白いものはほとんど写りません。

 この波長は、秒速18.2Km

遠ざかっている水素が最もよく写る

波長です。白かったところには、

随伴黒点や、スピキュールなどが

写っています。

☆プラージュは見えていません

image026

次に、Hα線の波長より0.2Å長い

波長を中心にして、撮影してみました。

これにも、白いものはほとんど写り

ません。

 この波長は、秒速9.1Km

遠ざかっている水素が最もよく写る

波長です。白かったところには、

随伴黒点や、スピキュールなどが

写っています。

☆プラージュは見えていません

image027

Hα±0.0Åの写真です。

これには、視線方向に静止している

水素が最もよく写ります。

 

☆白いものが少し写り始めました。

image029

Hα−0.2Åの写真です。

これには、視線方向に秒速9.1Km

接近している水素が最もよく写ります。

少し白いものが写り始めました。

 そして、随伴黒点は、その白いものの下に隠れました。

☆白いものは随伴黒点より手前に

あります。

image031

Hα−0.4Åの写真です。

これには、視線方向に秒速18.2Kmで接近している水素が最もよく写ります。

白いものが大きく写りました。

☆白いものは高速度で手前に動いています。

白いものは、強いHα線を発光しながら上昇する、フレアが吹き上げた水素のプラズマの

雲のようなものであると考えられます。

    ---ちょっと、待ってください。

 

撮影時刻を確かめてみると、撮影時刻の順序が上下で逆になっています。1014分にあった白いものが、1055分に消えたとは考えられませんか。

    ---そう思うなら、もう一度写してみましょう。

 

image033

というわけで、間違いなく、フレアです。

  ごく稀に、プラージュがHα線の写真に写りますが、殆どはフレアです。

  しかし、プラージュが見えていたことを確かめるのは、このように、容易ではありません。

  昔はこの白いところの広さでフレアの強度を測定していたことは、上述のとおりです。

 

 

そこで、教訓

  「一枚の写真から、太陽の蘊蓄(うんちく)を語るなかれ」

   Don't talk too much about the sun with a single shot of photograph

です。

 

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