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02太陽 

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5. 太陽光の分光

(1) NDフィルターを利用した太陽の観察へ戻る

 

(2) フラウンホーファー線へ戻る

 

(3) 影の正体を写すCaKフィルター

  雲や煙が影を作ること、太陽の光を分光するとフラウンホーファー線という影が見えることを、これまでに説明してきました。雲の影を見つけたときに、その雲の形が分かると役に立ちます。積乱雲なら雷雨に注意、巻雲ならば上空に強風があり、気球の飛行は注意、冬なら冷え込みに注意です。煙も同様に、形から、煙突なので大丈夫、あれはたき火なので要注意、あの上がり方なら火事かもしれないので消防隊は出動です。

  そこで、太陽の光のスペクトルに影(フラウンホーファー線)を落としているものを見ることができないか考えてきた人たちがいます。太陽の観測所、天文台、理学部天文学科で太陽を研究してきた人達です。また、そのために必要な光のフィルタリング技術は、工学部の応用物理や、物性や、エレクトロニクスの研究者が、レーザー、メーザーを研究しながら、それに必要な増幅や検波の技術を開発してきました。フィルタリングや増幅に必要な、ドーピング、蒸着、スパッタリングなど均一に物の中や表面に他のものを拡散させたり、メッキしたりする技術の研究も進めてきました。そして、半透明の反射板や、ローパスフィルター、ハイパスフィルター、バンドパスフィルターが次々と登場してきましたので、その原理をちょっとだけ説明しておきます。

 

@光の増幅

 音楽を聞いたり、話を皆に聞いてもらうときに音をアンプ(増幅器)で増幅しますが、音声信号だけではなくて、光やマイクロウエーブも増幅できます。その増幅技術の中にレーザーやメーザーがあります。レーザーはLight Amplification by Simultaneous Emission of Radiation、メーザーはMicrowave Amplification by Simultaneous Emission of Radiationの頭文字をとったものです。最近はダイオードなどでLASERを出しますが、昭和の中頃(私の若いころ)には次のような仕組みで発生させていました。

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 箱の中に出したい光を放出する元素などを入れておきます。片方に光などの電磁波を反射する壁を置きます、反対側には少しだけ電磁波を通す壁を置きます。外から、電磁波などでエネルギーを供給します。

 そして、箱の長さを調整していきます。すると、ちょうど発生したい電磁波のn倍になった時に、強いレーザー光やメーザー波が、出てきます。これが共鳴箱resonant cavityです。外部から与えるエネルギーの強さの変化を、何倍にも増幅した光やマイクロ波が得られます。現在でも、皆さんお使いの電子レンジはマグネトロンという装置がついていて、この共鳴箱でマイクロ波を増幅しています。強、中、弱とか700W, 500W, 400Wなど出力のコントロールができます。

 

A共鳴や干渉を利用したフィルター

 ラジオが発明されたころから電波の中から欲しい周波数(波長)の電波を利用するために、共鳴を利用したフィルターが使われてきましたが、光でも共鳴や干渉を利用してフィルターが作れます。

(1)実際には、高調波や低調波をどう検波するかとか、2次、3次の、反射や回折で生じる迷光をどうして消すか、ゴーストをどうやって視界から外すか、ニュートンリングや干渉縞をどうするとか、といろいろなことを考えなくてはならないのですが、ここでは、基本になるフィルタリングの原理をちょっとだけ説明しておきます。

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 左のようにガラスなど光を通すものの両端に一部だけ光を通す反射板を取り付けます。

 次に外からエネルギーを与える代わりに、取り出したい光を含む光を入射します。 

 すると、定在波のできる光は通り、他は透過しません。共鳴箱とほぼ同じ原理です。 しかし、ここで問題が発生します。共鳴箱の壁は動かせましたが、ガラスなどは厚さを容易に変えることができません。

そこで、次のように対策をします。

対策1. ガラスの膨張を利用して温度で調整

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  Daystar社のフィルターなどは、この仕組みを油の中に入れておき、その温度を油を加熱したり冷ましたりして調整します。この方式はかなりの微調整ができて、手元のフィルターは0.1Åの精度で透過波長を調整できます。欠点は温度の調整に時間のかかる点です。

 

対策2. ガラスを傾けて干渉を利用するチルト式

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ガラスを傾けて、定在波ではなく干渉を利用する方式もあります。ガラスの一端で反射した光や電磁波が折り返す距離を波長のn倍にするとその光や電磁波が他の波長よりも良く透過します。干渉が起きるためです。そこて、この種のフィルターを干渉フィルターと呼びます。

このチルト式では傾きを変えるだけで瞬時に透過波長を変えられます。

  共鳴や干渉を使う方式の欠点は、光が並行に来ているところ、つまり、望遠鏡の対物レンズより前につけないと、位置により光軸との角度に差が出て、透過波長が変化してしまう点です。大口径の鏡筒の場合、極端に高価なものになります。そこで、一度対物レンズで集めた光を、バローレンズで平行に近い光線に戻して、そこに、フィルターを入れます。

 

対策3. 圧力を利用するエアーチューニング式

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対策1の時間が掛かるのを短縮するため、空気の圧力などを利用して反射板の距離を変化させます。LUNTなどの製品の内、値段の高い太陽望遠鏡についているのを最近よく見かけます。

 欠点は、温度変化で圧力も変わりますので、中心周波数をいつでも一定に保つのは困難になる点です。アマチュア向きで写真を楽しむのであれば、毎回調整すればよいだけですが、長時間の経過観察やドプラー効果を使った速度の計測には向かないかもしれません。

 

というように、それぞれの方式に一長一短はありますが、あの細くてぼんやりしたフラウンホーファー線だけを通すように設計したフィルターができて、しかも、アマチュアが小遣いでとは言いませんが、何とか買えなくもない値段で手に入るようになりました。

 

ACaK線のフィルター

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このフラウンホーファー線の写真の右端のKと書いた暗い線、フラウンホーファー線のK線だけ通すフィルターがCaKフィルターです。カルシウムCaが出すフラウンホーファーのK線という意味です。下の写真は私の使っているもので、LS12CaKMDというフィルターです。

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対物レンズ側  干渉フィルター

接眼部側  干渉フィルター

 干渉フィルターのユニットには、透過する波長の幅を狭くするために干渉フィルターが2組入っています。ダブルスタックの干渉フィルターです。どちらも、ご覧のように鏡にしか見えませんが、ごくわずかに光を通します。大半の反射される光が視界に入らないように、傾斜して取付けてあります。

 それと同時に傾斜型の干渉フィルターの一種にもなっています。従って、上述のように透過する波長に対しては、この角度が微妙ですので分解清掃には神経をすり減らします。

 

(1) メーカーはユーザーによる分解を禁止しています。元通りに普通の人は組み立てられないからです。しかし、分解ができなければ汚れてきたり、調整がずれたときに直せません。そうしたことができなければ、綺麗な写真が撮れないのは当然のことです。そういう意味では素人向けの道具ではありません。

 

 干渉フィルターの向き合う面を、板ガラスの両面を利用して作る限り、フラウンホーファー線のK線であるカルシウムの波長に合わせて向き合わせることはできません、その波長λcak393.4nmで、紫色の光ですが、1ミクロンの1/3程度です。多分そんなに薄いガラス板は作れないでしょうが、たとえ作れても、その薄いガラス板は強度が足りず、風に吹かれただけできっと割れてしまいます。このため、その数千倍から数万倍の厚さのガラス板に蒸着やスパッタリングで反射材をメッキしてあります。波長がλcakの整数倍や整数分の1の波長でも干渉が起きます。

  例えば、2倍の786.8nmの光は、赤い可視光線です。

 つまり、干渉フィルターだけでは、所望の光だけを取り出せません。そこで、紫色の光だけを取り出すために、接眼部側にもう一つ次のフィルターが付いています。

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対物レンズ側から見たところ

接眼レンズ側から見たところ

このフィルターは、バンドパスフィルターになっていて、紫色の光だけ通します。

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組み立てたところです。

中心透過波長 λcak = 393.4 nm

半値幅 = 2.4(0.24 nm) 以内

と取扱説明書には書いてあります。

 

(2) ところで、このフィルターを通った光は、たいていの人にはかすかにしか見えません。カメラにも大抵写りません。紫外線との境目付近の光ですので、このフィルターを買ってきても、たいていの人にはボヤーットした紫色の丸いものが見えればよい方で、何も見えず、なにも写せません。拙宅にある十数台のカメラの内1台だけ写せます、製造年月日の違う同型の他の2台には写りません。テレビのモニターも、4台持っていますが、有名ブランドではない1台でしか見えません。一般的な可視光線のカメラやテレビの設計の範囲外、想定外の波長の光です。

理科年表では0.4μm (400 nm)までが可視光線の紫となっていますので、393.4 nmの光は紫外線の一種ということになります。カメラやテレビで写せなくても、仕方がありません。

 

 使用可能な望遠鏡の大きさは、干渉フィルターの反射率で決まります。大口径の望遠鏡に使うためには反射率を高くして、熱がフィルターを壊さないようにしないといけませんが、このフィルターの場合は、 D=100mm までです。

 

 

ACaKフィルターで写した太陽

  準備が大変でしたが、これからが、本番です。太陽のスペクトルに映る影の一つ、フラウンホーファー線のK番目の影の正体を暴(あば)きます。

  下図は、上記のフィルターで撮影した太陽です。 白い光球の上に灰色の影が映っています。これが影の姿です。ついに影の形が見えました。 影と一緒に写っているのは、黒い塊が黒点です。 白いところは高温部でプラージュと言います。プラージュが多かったり広かったりするとフラウンホーファー線のK線はそれだけ淡くなります。

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  2015/09/21 10:28  1/8sec 8flame, D=70mm, f=700mm ISO=400 

   LS12CaKMD  Canon Kiss X3

白黒写真では見にくいので、着色します。CaK線は紫色なので色を紫にします。

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  随分と見やすくなりました。真っ白な光球の表面で、特に高温で熱いところは白いままです。また、温度の低い黒点は黒く写っています。そして、紫色の雲か煙のようなものが全体を覆っています。その紫色のものは分光分析でカルシウムであることが分かっています。

  なんで、そんなところにカルシウムがあるのか・・・・?

  水素を核融合してヘリウムに変えているのが太陽ではなかったのか・・・・・・?

それは、理学部の人たちの仕事です。私のように、工学部で学生やら先生やらをさせてもらってきた、いわば職人、匠、風情の口を出すことではありません。

  待ってください、まだ、私の仕事が残っていました。普段は、面倒くさいので手を抜いて、ここまで処理したら、そのまま、星ナビに投稿したりしてますが、それでは職人魂か泣くのではないかと、言われては困ります。影の正体をご覧に入れます。

 

 まず、上の白黒写真の階調を反転します。

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 次にこんなものを用意します。反転する前の白黒写真の階調(トーン)を調整し、光球面を飽和させます。

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 黒地に白い日の丸ができます。そして、この下ごしらえをした2枚を重ね合わせますが、暗い方を残す比較暗合成を行います。すると、影を落としていた雲が黒い背景に対して明るく見えてきます。

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そして、白黒写真には灰色に写って見えていますが、この光は波長がλcak = 393.4 nmですので、紫色の光です。ですから紫色に着色します。

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  これが、太陽のスペクトルに暗い影を落としていたものの内、K線を落としといたものの正体です。カルシウムのプラズマかイオンの雲です。この雲のある位置は、光球の白い光を遮(さえぎ)っているのですから、光球より手前です。また、彩層の写真では、底の方に紫があり、上が赤かったのですから、彩層の一番底にこの雲が漂っていることになります。

  ここまで、やって来ましたので、もう一歩進めましょう。

黒点のある所を拡大します。

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左が反転前  影の写真         

右が反転後  Caの雲

 黒点ができたりして活動が活発なところを活動領域と言います。この写真には黒点の周りの活動領域Active Region AR12414 とその左斜め下に黒点はありませんが、プラージュ(白いところ)の広がっているAR12412が写っています。活動領域の番号はフレアの確認された順に振られています。

 左の反転前の写真に黒点はただの黒い点ではなくて、黒いところと、濃い灰色のところからできているのが写っています。灰色のところを半暗部と言います。 

 全体を覆っているものは、なんだかブツブツしています。その粒が飯粒(めしつぶ) grainのようなので、この粒の事を太陽の粒状斑(ソーラー・グラニュールsolar granule)といいます。砂糖で粒々なのをグラニュー糖granule sugarといいますが、太陽にもグラニュールがあります。このブツブツを観察していると、グラニュー糖のような固体の粒ではなく、みそ汁やシチューを煮ているときにブツブツと泡が上がってくるように、動きますので、太陽の光球が沸いているのが分かります。

 ・・・同じことをNDフィルターの時にも書きました。よく、考えてみましょう。NDフィルターでは、白い光を透過しています。つまり、紫の光もそのほんの一部として含まれていますが、殆どは光球で出ている強い光でした。ここで見ているCaK線とは比べ物になりません。つまり、光球には光球のグラニュールがあるわけです。

  一方、このCaK線のグラニュールは、光球とは少し上の、彩層の中にあって、彩層の一番底の方にあります。光球から来る光にフラウンホーファー線として影を落としています。これはこれで、グラニュールに見えます。もちろん、同じグラニュールの下と上の関係になっているとは思われますが、NDフィルターの白斑と、プラージュの形がかなり違うことから、全く同じものが見えているわけではないと思います。

 

  また、右の写真の黒点の左下の方を見てください。グラニュールがかたまりになっていて、間にプラージュがあります。その塊は黒点の近くで比較的小さく、離れると次第に大きくなります。どうしてこんなものができるのかは、ご飯の時にみそ汁が出たら、手を付けずに、じっと見ていてください。みそ汁が表面で冷えて、ちょうどこの塊のような模様を作りながら対流しているのがわかります。この塊がスーパーグラニュールです。

 このことから、太陽の光球には大きな対流もあると考えられています。

  なぜか日本で太陽の研究が盛んなのは、

    みそ汁が食事に出てくるせいかもしれません・・・・・・・・

  ・・・・・・・・ 叱(しか)られますね、天照皇大神(あまてらすおおみかみ)の国でした。

 

 

 

 

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